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2017年1月 2日 (月)

『漂流』

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『漂流』 角幡唯介 著 新潮社2016☆☆☆☆京
 沖縄宮古島の隣の伊良部島佐良浜のカツオ、あるいはマグロ遠洋漁師本村実が37日間の漂流の後、フィリピンミンダナオ島付近でフィリピン人の乗り組み員とともに奇跡的に発見された実話のルポルタージュです。
 しかし、単なる一つの漂流事件だけではなく、佐良浜漁師がもっている海洋民族としての海に出てしか生きることの出来ない不思議な「文化」を追うことにもなります。
 一つの漂流事件から、ここまで深く一集落の特性を浮かび上がらせる手法は流石です。しかもそれが宮古島のすぐ近くにあるなんて想像だにしていませんでした。
 角幡さんの本としては、しかし、ぐいぐい引き込まれる部分が薄いです。彼の本は、『アグルーカの行方』にしても『空白の5マイル』にしても、彼自身が冒険をしている部分に最大の魅力があったのですが、この本では自分自身は冒険はしていません。その分、どうしても読むのに時間がかかってしまいました。
 とは言うものの、ルポルタージュとしてはやはり一級品だと思います。冒険まではしていないといえ、取材のためにカツオ一本釣り漁船に乗ったり、グアムからミンダナオまでマグロ漁船に同乗したり、伊良部島は勿論のこと、フィリピンやグアムまで取材したりと、普通に考えるとすごい事をしています。そうして、およそ事件に少しでも関係がありおそうな人物は、ほぼ全てに直接取材しています。歴史的な考察も含め、やはり、素晴らしいルポルタージュだと思います。

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