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2012年11月 4日 (日)

『ナチスの発明』

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 『ナチスの発明』 武田知弘著 彩図社
 著者も私もナチスを賛美する気持ちなど全くないのですが、この本は面白かったです。ナチスというだけで全て悪いこととして扱い、その具体的な政策内容をあまり知りませんでした。世界恐慌後に、600万人以上いた失業者をほぼ無くし、その対策としてアウトバーンを建設したとか、国民に夢を与えるものとして庶民でも買える自動車フォルクスワーゲンを作らせたということは知っていましたが。
 ナチスドイツが世界に先駆けて発明(完成)させたものを列挙すれば、「コンサート技術」(ヒトラーの演出、PA音響技術などは後にミックジャガーらロックミュージシャンが学んだそうです)、「聖火リレー」、「ミサイル」、「ジェット機」、「テレビ」、「テレビ電話」、「人造石油」、「合成ゴム」、「合成繊維」、「ヘリコプター」、「テープレコーダ」、「電子顕微鏡」、「リニアモーターカー」などです。
 そういった科学的・軍事的な発明はもちろんすごいのですが、社会政策としても世界に先駆けて素晴らしい事を沢山始めています(あくまでそれはドイツ人だけの為にですが)。
 「アメとムチ」という側面もあったのでしょうが、ナチスは労働者にも夢のある政策をいくつも実行しています。大衆車フォルクスワーゲンの開発だけではなく、庶民でもバカンスをとって格安海外パック旅行が実施されるようになりました。オペラやコンサートに行けるようになり、図書館も作り、プールなどスポーツも誰でも出来る様にしていた様です。また、少子化対策にも力を入れ、貧困家庭に食料やミルク、衣料などを提供したり、なんと出産した母親に対する保養制度(母親だけを赤ん坊から離して保養地や温泉地で数週間過ごす)まであったそうです。また、ガン対策やアスベスト対策も行われていたそうです。余暇まで国民を管理していたとも言えますが。
 そういった事が可能となったのは税制に秘密があります。労働者、低所得者にはかなりの減税を行い、大企業に増税をしたそうです。1934年に導入された配当制限法では、6%を越える配当は強制的に国立銀行に預金させ、4年間引き出せないようにし、それを貧困者救済や建設事業に回した様です。
 このナチスの少子化対策、貧困対策は、内部留保を沢山蓄えている大企業には法人税減税をし、庶民には消費税を上げて児童手当をカットする今の日本と対局にある気がします。逆に言えば、ナチスの手法は、今の日本を救う解決策のヒントを内包している気がしないでもありません。なるほど、こういう政策を見ると、「国家社会主義ドイツ労働者党」という名前がだてではなかったのだと頷けます。
 もちろん、その影に、600万人に及ぶユダヤ人やロマ、自由主義者などの虐殺や他民族のへの侵略があったことは紛れも無いことです。でも、あの時ドイツ国民がなぜあそこまでヒトラーを受け入れたのかということは、しっかり分析しなければならない事だと思いました。
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 『日本を捨てた男たち~フィリピンに生きる「困窮邦人」』 水谷竹秀 著 集英社
 こちらは、日本で生きることが出来なくなった貧困生活者が、フィリピンなどで現地の人たちの助けを受けながら何とか生き延びている人が何百人もいるという話。あまり知りたくなかった現実です。それにしてもフィリピンの人はあたたかい人が多いのですね。

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